フィトンチッドは、樹木が自身を守るために自然に放出する揮発性物質で、森林の中で私たちが感じる「清々しさ」や「心地よさ」の背後にある重要な成分です。
この物質は、人間や環境にさまざまな効果をもたらし、住まいづくりにも大きな利点があります。
フィトンチッドの詳しい働きと、その効果を活用する住宅の設計について深く掘り下げてみましょう。
フィトンチッドは、主に樹木から発生する揮発性の化合物で、樹木が細菌や昆虫などの外敵から自分を守るために作り出します。この物質は、樹木が森林の中で生存し、健康を維持するための「自己防衛」の一環です。
フィトンチッドには抗菌、抗ウイルス、抗カビ作用があり、森の中の空気が清潔である一因となっています。また住環境に優れたメリットがあると言われています。
フィトンチッドは、植物の種類や環境によって異なる成分が含まれていますが、一般的に以下のような成分が見られます
・テルペン類:多くの樹木から放出される揮発性物質で、抗菌作用があります。半永久的に放散されるフィトンチッドの中の香り成分(テルペン)により空気が浄化されます。
・フィトール:葉緑素から抽出される成分で、抗酸化作用があります。
・リモネン:柑橘類から発生する芳香成分で、ストレス軽減や消臭効果があります。
フィトンチッドは、空気中の細菌やウイルスを抑制する効果があり、森林の中では空気が清浄に保たれています。この作用は、人間にも恩恵をもたらし、森林浴を行うと免疫力が高まることが報告されています。フィトンチッドが含まれる空気を吸い込むことで、私たちの体はリラックスし、自然と免疫系が活性化されます。
フィトンチッドには、リラックス効果を促進する働きがあります。フィトンチッドの成分を吸い込むことで、脳がアルファ波を放出し、精神が安定しやすくなります。特に、香りには鎮静作用があり、森林浴や木材の香りが心を落ち着かせる要因となっています。
フィトンチッドは、空気中の悪臭成分と反応し、無臭物質に変化させる作用があります。そのため、森林内では腐敗臭や動物の排泄物の臭いがほとんど感じられないのです。住宅にフィトンチッドを取り入れることで、トイレやキッチン、リビングの空気を清浄に保ち、家庭内の臭い問題を軽減できます。
もみの木などの樹木は、湿度が高いときには空気中の水分を吸収し、乾燥したときには水分を放出する自然の調湿作用を持っています。このフィトンチッドの効果により、空気が常に快適な湿度に保たれ、呼吸がしやすい環境が維持されます。結果として、アレルギーや喘息の症状を和らげる効果も期待できます。
住宅やインテリアに木材を多く使用することで、フィトンチッドの恩恵を受けることができます。特にヒノキやもみの木など、フィトンチッドが豊富に含まれる木材を選ぶことで、室内の空気が清浄に保たれ、心地よい香りが漂います。木材になってもフィトンチッドは長期間放出され続け、空気を浄化し、快適な空間を保ちます。
また、木材には湿度の変化に応じて収縮や膨張を行う性質があり、これによって室内の湿度が自然に調整されます。木のぬくもりと調湿効果が相まって、まるで自然の中にいるような安らぎのある空間が実現します。
フィトンチッドが豊富な木材を使用した住宅では、森林浴と同じような効果が期待できます。特にリビングや寝室にフィトンチッドを放出する木材を使用することで、日常生活の中でリラックスしやすい空間を作り出すことができます。住宅全体でフィトンチッドの効果を活かすことで、家族全員が健康で快適に過ごせる環境が整います。
日本では古くからヒノキ風呂が親しまれてきました。ヒノキにはフィトンチッドが豊富に含まれており、その香りが心身をリラックスさせ、免疫力を高めるとされています。現代の住宅でも、ヒノキ風呂を導入することで、入浴時にフィトンチッドを直接体内に取り込むことができます。
もみの木もフィトンチッドを多く含む木材の一つで、床材や家具に使用することで、部屋全体に自然の香りを広げ、清潔でリラックスできる空間が広がります。また、もみの木は優れた調湿効果も持っており、湿度が適度に保たれるため、過ごしやすい空気環境が保たれます。
近年、フィトンチッドの効果については多くの研究が進んでおり、その科学的な裏付けも示されています。たとえば、森林浴が免疫機能にプラスの影響を与えることが報告されており、フィトンチッドの成分がナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性を高める作用が確認されています。また、フィトンチッドは自律神経に働きかけ、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑えることで、リラクゼーション効果をもたらすことがわかっています。
フィトンチッドの恩恵を受けるためには、ただ木材を使うだけでなく、その特性を最大限に活かした住宅設計が求められます。例えば、壁や床材、天井にフィトンチッドが豊富な木材を使用することで、空間全体にその効果を広げることが可能です。また、フィトンチッドを放出する家具やインテリアの開発も進められており、これにより手軽にフィトンチッドの効果を享受できる環境が広がりつつあります。
私たちが使っているもみの木は、自然乾燥で処理されています。これにより、木材が持つフィトンチッドがしっかりと保持され、長期間にわたって空気中に放出され続けます。人工乾燥とは異なり、自然乾燥はフィトンチッドの効果を最大限に引き出すのです。
さらに、フロア材を柾目(直線状の木目)に取ることで、その効果がより高まります。柾目の木材は収縮や反りが少なく、フィトンチッドの放出量が安定し、より快適で健康的な空間を提供します。
フィトンチッドは、自然界の中で樹木が作り出す「自己防衛」のための成分ですが、私たち人間にも多くの恩恵をもたらします。抗菌作用やリラクゼーション効果、消臭・調湿効果など、その効果は多岐にわたり、住空間に取り入れることで健康的で快適な生活環境を実現します。
家を建てる際やリフォームを考える際には、フィトンチッドを活かした自然素材を取り入れることで、自然の力を取り入れた住まいづくりを検討してみてはいかがでしょう。
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